稀代の歌姫、渾身の1枚。露崎春女「One Voice2」
「単なるアカペラ」ではない凄みを探る。
春女ちゃん(ファンの皆さん、すんません。同業者として、楽屋での呼び名なんでこう書かせてもらいます)との初顔合わせからすると、随分な年月を経た。
まだ彼女が少女の面影残る頃、彼女自身のアルバムに参加させていただいた。
(プロデューサーは、最近ではエヴァンゲリオンのテーマソングなどの作曲者、アレンジャーとして著名な鷺巣詩朗氏)
同じシンガーとして感じたものが、年月を経てこのように昇華して行く様を見ることは、驚きや喜びと共に大きな感動でもある。
まず選曲からして「わかる」。
以前から好きだった彼女自身の曲「Forever In Your Heart~あなたがいたから~」「One summer day」のセルフカヴァーの出来はいわずもがな。
その出来を予見するかのような1曲目Jackson5のカヴァー曲「A B C」
この1曲はボクシングの試合に例えるなら、様子見など一切なし!
鋭いジャブで切れ込んだと思ったら、いきなり右ストレートが飛んでくる。
またそれだけではない。
返しの左フックから右アッパーを打ったと思ったら、まだ体が温まってない相手のパンチをスウェーバックでかわしざま左右の高速コンビネーションを叩き込む!
もんどりうって倒れた相手を、レフェリーのカウントを無視して立とうとするところにフルボッコ!
レフェリーに手を取られ減点されてる最中に、息も絶え絶えコーナーに戻った相手を睨み付け、次のラウンドでフィニッシュするかと思いきや、第2ラウンドは、流れるようなジャブでじわじわ痛めつけて行く・・・ボクシングわからない人ごめんなさい(笑)。
モータウン時代の名曲「ABC」から薬師丸ひろ子が歌った「Woman」の流れの見事さ。
展開の意外さに舌を巻く。
そして前述の「予見」に関して言うなら、その「ABC」の中にあるコンビネーション含むパンチの多彩さこそが、このアルバムの全貌を表現していると言えるだろう。
もういい加減ボクシングを離れて(笑)、音楽的に紐解くなら、そのカギはまずその「声の熔け方」にあるに違いない。
それこそマイケル・ジャクソンをも彷彿とさせる彼女歌い方は、そのジャンルの王道であり、一歩たりとも脇道に行かない。
そして時にボーイッシュとさえ表現して差し支えないリードシンギングの声質を、歌い続けた者だけが持つ、年を経た喉からしか出ることの出来ない「ダイナミックレンジ」が支え、しかもそのリードに「幅」を持たせている。
そして次曲、薬師丸ひろこ「Woman」Taylor Swiftの「Shake It Off」から最後のセルフカヴァー「One summer day」に至るまで、
その姿勢は、逡巡なく歌い切られ、一本の線で繋がれている。
わかったよ春女ちゃん。
君もオレも、最後は同じ「歌バカ」なんよね。
(またもや春女ファンの皆さん、同列に並べてごめんなさい!)
これは、このアルバムは、やり遂げようとする者、またやり遂げたい、と思い続ける者にしか出来ない「人生の中の歴史的1枚」なんやね。
有難う。
また明日からオレも歌い続けれるよ!
To Dear Harumi.
From JAYE